沿革

こころの発達医学分野は、児童精神医学教室を希求する先人たちの活動の蓄積の上に、2010年4月に脳神経医学専攻統合脳医学講座に創設されました。

その歴史を紐解くと、1936年に東京大学医学部脳研究室内に児童部が設置されたのが始まりとされています。

1953年頃には、東大病院精神神経科にて子ども外来が始まっていたとのことです。

1967年に精神神経科小児部デイケアとして、自閉症をはじめとする発達障害の治療教育を開始したことが、現在に直結すると言えます。その後、世界的動向に遅れずに行動療法を導入し、さらに、認知発達に着目して医師や心理士が協働して発達評価や治療教育の検討を進めてきました。

1983年には、認知発達の水準に合わせて、1. 認知・情緒の発達の促進、2. 社会適応能力の向上、3. 行動の異常と偏倚の減弱と予防を目指す治療教育がほぼ整備されました。並行して、児童精神科医による外来診療も継続的に行われてきました。

1992年には、それまでの自閉症の臨床及び研究の成果をまとめて出版しました。それを一つの軸として研究を深めつつ、親支援や学校精神保健、さらにはトゥレット症候群などにも研究の幅を広げていきました。

2001年には、デイケアではなく個別及び小集団での治療教育を含めた心理支援が医師と心理士の協働で行われるようになりました。

2005年4月に特別教育研究経費による「こころの発達」臨床教育センターが設置され、講義シリーズや臨床実習などを通じて幅広い臨床家の育成を図ることとなりました。この活動に対する診療部門として「こころの発達」診療部が院内措置で開設されました。臨床部門ではありますが、それまでの活動を踏まえて臨床に根差した研究も継続しました。

2010年3月で「こころの発達」臨床教育センターが年限を迎えるのと時を同じくして、こころの発達医学分野が創設されました。こころの発達診療部の診療に関わると同時に、それを研究や教育のフィールドとして活用することとなりました。

このようにこころの発達医学分野は、多職種連携で診療・教育・研究を行ってきた歴史を踏まえた児童精神医学教室と言えます。